限界集落の寺院とご門徒さんをどのようにしてサポートしていくのか ~ 第25組宇陀ブロックの寺院サポート検討会議

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榛原を過ぎるとすれ違う車はめったになく、宇陀の山々を縫う道はどんどん心細くなっていきます。会所になっている室生の專明寺さんまでは隣の組のうちからでも車で一時間半、同じ奈良でもこちらはもう紅葉の季節は終わっていて、すっかり冬景色です。ようやく到着した專明寺さんのある山村の住民は18人、平均年齢は78歳とのこと。典型的な限界集落です…。

大阪教区第25組宇陀ブロックは奈良県東部の山間地区で、過疎化が激しく多くの限界集落を抱えています。九ヵ寺中、専業で成り立っている寺院は二ヵ寺にすぎず、他は兼業、もしくは無住のため代務をお願いしているという状況です。

現時点では寺院の運営が困難な状況にも関わらず住職さんの“志”によって維持していますが、今後は益々進む過疎化と住職の高齢化や後継者問題で行き詰まることは目に見えています。そのような事態になったとしても、その地に住み続けるご門徒さんがあれば安心して法義相続ができるような体制を整えて欲しいと、前ブロック長さんの頃から長年、教務所へ要望がなされてきました。

この度、ようやくその具体的な対応に向けて、宇陀ブロックの住職四名、大和大谷別院から輪番と列座、大阪教区教務所から駐在教導、難波別院から法務部部長、教区教化センター主幹、教区教化委員会から組教化推進部二名、計十一名により初めての会合がもたれました。

簡単にこれまでの経緯を述べさせていただきますと、宇陀ブロック内寺院の助け合いはこれまでも行ってきましたが、今後を見据えますと個人的な融通のつけあいには限界があります。そこで先ず、難波別院から法務員を派遣することが検討されましたが、車で二時間かかるというのは現実的ではなく断念となりました。次に考えられるのは、奈良県全体の崇敬である大和大谷別院が立場的に対応するのに相応しいわけですが、輪番と列座一人という現体制では難しいというのが現状です。

そこで、ブロック内での助け合いにしても大和大谷別院が関わるにしても、公的なサポート体制の樹立が必要であるということになりました。しかし、そこに至るにはいくつもの問題があります。

先ず、同じ真宗寺院といっても一ヵ寺一ヵ寺の事情や慣習は様々で、法務の際の式次第やお布施の額が異なります。例えば田舎の法事のお勤めは丁寧で三部経も珍しくありません。かたや葬儀や月参り等の法礼は大阪に比べると半分以下が相場です。同じ奈良県の奈良市内と比べても開きがあります。そこへサポートしてもらうとなると、お勤めの仕方にしろお布施にしろ一定の基準を設ける必要があります。そのことをサポート対象地域のご門徒さん方には共通認識を持っていただかねばなりません。

次に、大和大谷別院が対応するとしても、別院にも本来の業務があり、単独でのサポートは困難です。よって“サポートする別院”をサポートしていただける、もしくは対象地域をサポートしていただける寺院を募り、それを采配するというシステムが必要となります。

こうした問題を乗り越える道のりは大変厳しいものだと考えられますが、成し遂げなければならないことです。
逆にこの問題を放っておけば、近隣の他宗の寺院や葬儀法要斡旋会社に仏事が流れ、真宗大谷派の法義相続がなされなくなってしまいます。

なお、大和大谷別院にもメリットがないわけではありません。一つには存在感がないと言われる大和大谷別院の存在意義を高め、“必要とされる別院”になれること。二つ目に脆弱な経済基盤の改善になることです。

今後は、宇陀ブロックと同様の悩みを抱える吉野地区を含む第27組からも組長が参加して、サポート体制の実現に向けて協議を続けていくこととなりました。

他教区にも同様の問題を抱えている地域があることでしょう。本案件がモデルケースとなれるよう県内寺院一丸となって取り組んでまいりたいと思います。