つるうめもどき
勇猛(ゆみょう)のふるまい

 本願寺の三代目の覚如上人の『口伝紗』に

「凡夫として、毎事勇猛(まいじゆみょう)のふるまい、みな虚仮(こけ)たる事」

というお言葉があります。

 勇猛とは勇ましく猛々(たけだけ)しいことで、そのふるまいは皆嘘偽りだと言われるのです。見栄を張るな、よい格好をするな、強がりを言うな、それは皆嘘偽りだという事なのです。

 このお言葉の後に

「凡夫は、ことにおいて、つたなく、おろかなり」

とあります。私たち凡夫は、つたない、無様(ぶざま)だとおっしゃるのです。だから、よい格好をしても続かないのです。

 「奥さん、いつもええ服着てはりますな」と言われたら、うれしいですがとてもしんどいです。ちょっと市場に行く時でも、いい服を着て行かなければいけません。

 真宗の教えは、こんな気をつかうことはないのです。よそ行きとは違う、普段着なのです。そのままでよいのです。

「人は、あがりあがりて、おちばをしらぬなり。ただ、つつしみて、不断、そらおそろしきことと、毎事に付けて、心をもつべきの由、仰せられ候う。」(人は上へ上へと上がるばかりにとらわれて、落ちるところのあることを知らないものである。常に身や心を慎んで、何事につけても畏(おそ)れ多いことであると、心を用いるようにしなければならない。)

 『蓮如上人御一代記聞書』に示された蓮如上人のお言葉です。

 念仏詩人の榎本栄一さんの「木の上」という詩があります。

「うぬぼれは 木の上から ポタンと落ちた 落ちたうぬぼれは いつのまにか また 木の上に登っている」

 また、「あぶない」という詩もあります。

「ほんに婆婆と申すところ 眼がくらみやすい 有頂天になりやすい 足すべりやすい」

 よい格好をしたり、天狗になったり、上へ上がることばかりに目が行き、足元がふらついている私たちですが、しっかりとわが身のありのままの事実、自分の足元を見すえて生きていきたいものです。

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Last modified : 2014/12/10 12:43 by 第12組・澤田見(ホームページ部)