ライラック
目に見えない不思議な力

 昨年の夏、毎日のお参りの時、暑くて汗びっしょりになったり、クーラーや扇風機で涼しさを通り越して冷やしたりで、案の定、鼻をやられ、格好悪いくらい鼻をかんでばかり…。

 そのせいか、9月に入ってから臭覚が全くなくなってしまいました。よい匂いもしなければ悪い匂いも一切わからなくなってしまいました。これも自然のはからいで老化現象の一つか、匂いとも永遠にお別れだと妙にさびしい気持ちであきらめていました。

 病院のお医者さんは、あきらめないで、匂いをかごう、わかろうという気持ちをもつことが大切ですといわれるのです。といっても、大きく息を吸うて鼻をふくらませてみてもどうなるものではありません。

 9月、10月、11月と花ざかりの木犀の匂いはもちろんのこと、お線香の匂い、お香の薫りとも全く無縁の毎日が続きました。

 ところが、12月に入って、ある日突然匂いが帰ってきたのです。お香のよい薫りがわかるのです。と同時にいやな匂いもわかるようになりました。あきらめていただけに全く不思議なことでした。

 傷口が自然に治っていくように、人間のからだの中に潜んでいる生命力というのか、いのちの働きとでもいうのでしょうか、それこそ目に見えない不思議な力です。それは、自分の力ではありません。私は、しみじみ自分の思いではかなわない、あるがままの他力に生かされるわが身であることを感じ取らざるを得ませんでした。

私の中に
 身を埋めて
私を生かしている
 ものがある。

(平成4・3・20)

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Last modified : 2014/12/10 3:18 by 第12組・澤田見(ホームページ部)