ハナズオウ

七施に、「花施」を加えたい

お布施といえば、一般には法事の時に坊さんに差し上げるお金のことを言っているようです。

しかし、布施とは、もともと他人に施しをする意味で、自分の持ち物を惜しみなく他人に与え、ともに喜び合うことをいいます。坊さんが仏の道を説くことを法施といい、在家の人が金銭や物品を差し上げるのを財施といいますが、ともに布施なのです。

また、施すものは、必ずしも財物でなくてもよいわけで、これを「無財の七施」と言います。つまり、

  1. 眼施(がんせ) 涼しい眼。
  2. 和顔悦色施(わげんえっしきせ)〈顔色和悦施〉 なごやかな顔、やわらいだ笑顔で人に接する。ほほえみを浮かべて、にこやかな顔で他人に接する。
  3. 言辞施(ごんじせ) やさしい言葉、やさしいいたわりの言葉を人にかける。
  4. 身施(しんせ) 行い。骨惜しみせず働く。
  5. 心施(しんせ) あたたかい心。
  6. 床座施(しょうざせ) 座席をゆずる。それぞれの立場を守り尊重する。
  7. 房舎施(ぼうしゃせ) 宿を貸す。どんな人でも心よく迎える。

の七施です。

ずうっと前に、新聞の「ひととき」欄に高知市の主婦の方が、この七施にもう一つ、「花施」(かせ)〈きれいな花を咲かせて人に喜んでもらう〉を加えたい気がすると書いておられました。家の前の食堂の主人が「大勢の人を喜ばせるのは、なかなかむつかしいが、花はええねぇ、みんなが楽しんで見て通る。これは大きな施しじゃ」と言われていたのを聞いて思い付かれたというのです。花好きの人が多いこともあり、心のあたたまる発想だと思います。

『大無量寿経』の中に、「和顔愛語」(わげんあいご)という言葉が出てきます。先程の「和顔悦色施」と「言辞施」と合わせたもので、いつもやわらいだ笑顔でもって人に接し、優しい言葉で相手に接することです。

ギクシャク、ギスギスした世の中で、これはやろうと思えばだれでも簡単にできる布施です。

そこで、布施で大事なことは、布施は小さな親切でもなく、恩に着せるものでもなく、喜んでさせていただくものです。布施をして感謝すべきはむしろさせていただいたほうなのです。

(平成6・5・9)

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Last modified : 2014/12/10 12:33 by 第12組・澤田見(ホームページ部)