問い

 私の娘は高校三年生ですが、昨年夏から突然学校に行かなくなり、なぜ行かないのか尋ねても黙っているだけです。担任の先生に相談したのですが、特に学校で問題があったわけではないようです。先生から尋ねてもらったら、「もう親の言いなりになりたくない」とのことで、私は情けなくなります。どうしたらよいのでしょうか。

(43歳・女性)

答え

「教えようと思う人から教わった人は一人もない」とは、小林秀雄氏の告白です。子どもは、親の言うことは聞かないが、親のやっていることを見て成長するとも言われます。

 親は子どもに対していろいろな願いを持ちます。健康であってほしい。学校へ真面目に行って、良い成績を取ってほしい。良い学校、良い就職、良い結婚をして、他人から後ろ指をさされるような人にはならないでほしい等々、子をもつ親ならだれしも願うことでしょう。

 しかし、親が子どもに願う心の内面には、親の思惑があるはずです。それは、親の見栄や世間体を計算に入れて、自分の物差しに合った子どもに仕立てようという思いです。「あんな子どもになっては私が困る。こんな子どもになったら親として恥ずかしい」という、いわば親の都合勝手な思いを子どもに押しつけて、しかも「お前の為を思って言っているのだ」と思いあがっている。

 夫婦の間柄についても、「夫は妻を愛するふりをして自分を愛し、妻は夫を愛するふりをして自分を愛す」と言われますが、なるほどお互いに私たちは自分自身がいちばん可愛いものでしょう。

「もう親の言いなりになりたくない」と言ってお子さんは不登校をされ、貴女自身は「誠意をもって育ててきたから、不登校に追いつめるようなことは何一つ思い当たらない」と言って思い悩んでおられる。その気持ちはよくわかります。しかし、娘さんの気持ちもよく考える必要があるのではないでしょうか。不登校という態度で、全身を挙げて何か大切なものを訴えているのでしょう。それは、両親の生き方に対する疑問、問いかけと共に、娘さん自身も気づいておられないかもしれませんが、現代社会に身を置いて、今、現に生きていることのほんとうの意味を問うておられるのです。私たち大人にも共通した根本問題です。その問いを親子共に共有できたとき、はからずも心が通じ合う世界が実現することでしょう。

(本多惠/教化センター通信 No.143)

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Last modified : 2017/03/01 20:26 by 第0組・澤田見(ホームページ部)