~叱咤激励は 時には凶器となり 慰めと癒しも 時には麻薬となる~

 最愛の人を亡くし悲しみに沈む人に「もう何年も経ったから、いつまでも悲しまずに人生を大切にして、頑張れ」と励ます人がいる。しかし、当事者の悲しみは当事者でしか分からない。「もう何年」ではなく「まだ何年」かもしれない。激励の言葉は時として人を深く傷つけることもある。現代は他人の悲しみを共有する共感力が低下しているともいう。
 一方、現代社会はストレス社会でもある。人々は、耳に心地よい言葉や、肌触りのよい世界、感動と癒しと慰めの世界を渇望している。癒しによって健全な心身を回復することもある。しかし、一歩間違えば虚構の世界を心に描き、現実の事実から目を背け、自立を見失い逃避の世界に埋没することもある。人間が人間を救うことの至難さがここにある。

Pocket

Last modified : 2014/12/13 16:37 by 第12組・澤田見(ホームページ部)