~ 静かに己を 悲しむ心より 真実の力は生まれる ─武内了温─ ~

 近年、「○○力」という造語が氾濫している。1998年に出版された赤瀬川原平さんの「老人力」が先駆けで、それからは「良識力」「人間力」「鈍感力」などたくさんある。最近では、衆議院議員の選挙のおり、「責任力」というのもあった。
 こういう先行き不安な時代には、断言型が人気であるようで、「○○力」と使うことで、そこからいつでも誰にでも何か与えられるように期待してしまう。はたしてどうであろうか。
 親鸞聖人は「悲しきかな、愚禿鸞、愛欲の広海に沈没し、(中略)、恥ずべし、傷むべし」と自らの姿を、静かに熱い心で見つめられる。何が悲しいのか。「○○力」がないことにではない。自分の本性を知らない、知ろうとしない己を悲しまれる。そして、恥ずべし、傷むべしという懺悔のこころに、真実の力は生まれるのである。

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Last modified : 2014/12/12 22:53 by 第12組・澤田見(ホームページ部)