苦が外からついてくると思うているうちは 苦はなくならない ~蓬茨 祖運~ 

 生老病死の現実を前に、私たちはまさに無力と云うほか無い事柄にしばしば直面する。
かつて37歳の若さで失明を宣告された井出信夫さんは、その受け入れがたい現実に悩み、苦しみ、病院を転々とし、すべて先祖や家族のせいだと周囲にあたり散らした。誰にも理解されないという不安と孤独の中、文字どおり絶望の闇の只中にあった。
 ところが現実を引き受ける機縁を得て、「闇の底が抜けた」。手記の最終章には明るく生き生きとした井出さんの姿があった。蓬茨祖運師は「苦しみをまぬがれるには、その苦しみを生かしていく道を学ぶこと」とも云われる。心の闇が照らされて、闇を闇と知らされる。苦は消せるものではなく、照らされ開かれるものだ。

Pocket

Last modified : 2014/12/13 12:02 by 第12組・澤田見(ホームページ部)