前を訪う(高木顕明の事績に学ぶ)

Pocket

皆さんは、高木顕明(1864~1914)という名をお聞きになられたことはありますか。

高木氏は真宗大谷派 大阪教区 浄泉寺(和歌山県新宮市)に縁あって入寺され、住職を務められた大谷派の僧侶です。その一方で彼は、明治末期に日本を震撼させた一大事件、「大逆事件」に巻き込まれました。

「大逆事件」とは、明治天皇の暗殺を企てたとして、幸徳秋水(1871~1911)を首謀者として多数の社会主義者・無政府主義者が検挙され、24名に死刑判決が下され、その翌日「天皇の恩命」で半数の12名は無期懲役となった事件です。その無期懲役を下された内の一人が高木氏です。

大谷派は、彼の逮捕、起訴を受けて、即座に「天皇と国家に申し訳ない」として、彼に「差免」処分(僧籍剥奪)を下し、判決後には、当時の宗派法規で最も重い罰則の「擯斥」処分(宗派から永久追放)を下しました。

しかし、「戦後の研究で、国家が社会主義者らの根絶を図って捏造した権力による犯罪であることが明らかになっている」(『高木顕明の事績に学ぶ学習資料集』6頁)と論ぜられるように、ー国家は未だに認めてはいませんが ー「大逆事件」は明らかな冤罪事件です。

高木氏は、非戦を主張し、平和を願い、廃娼運動等を通して、基本的人権の尊重を訴え続けられた仏教者でありました。それにも関わらず、国家によって犯罪者の烙印を押され、さらには大谷派からも僧籍を剥奪され、寺から追放させられました。出獄しても帰る寺のない彼は絶望のうちに秋田監獄で縊死されました。

 

高木顕明(1864~1914)

氏の詳細については、『高木顕明の事績に学ぶ学習資料集』等をご参照ください。

https://books.higashihonganji.or.jp/defaultShop/top/CSfTop.jsp

(東本願寺 「読みま専科 TOMOぶっく」)

 

遅きに失した事ではありますが、大谷派は1996年4月1日、かつての高木氏に対する過ちを認め、顕彰碑を建てて彼の復権を願い、僧籍の復活・処分取り消しを行い、遺族・門徒に対して心からの謝罪を行いました。

大阪教区では、宗派と共催のもと、毎年、氏を訪う「遠松忌法要」を浄泉寺(住職:山口 範之)にて勤めております。本年(2018年)は6月23日(土)に開催いたしますので、有縁の方々をお誘い合わせの上、ご参集くださいませ。

 

※遠松忌法要の詳細については『真宗』4月号参照、もしくは大阪教務所【06-6251-4720】までお問い合わせください

遠松忌法要に向けての会議
(@大阪教務所)