問い

布施(ふせ)の本来の意味を教えてください。また、どういう気持ちで布施をするのがよいのでしょうか。

(70歳・男性)

答え

 布施とは読んで字の如く、あまねく施すということで、慈悲の気持ちで他人に物や労力を与えるという、仏道を歩もうとする者の、大切な行いの第一歩だと教えられています。

 布施行(ふせぎょう)については三輪清浄(さんりんしょうじょう)といわれています。三輪とは施者(せしゃ)、受者(じゅしゃ)、施物(せもつ)のことで、布施行が成り立つには、物を施す人とそれを受けとる人と施す物、この三つの条件がそろっていなくてはならないわけです。さらにその三者が清浄でなくてはなりません。

 現代社会でお布施といいますと、いわゆるお寺さん(住職または僧職にある人)にお経を読んでもらう、そのお礼としてお金を上げる。それを「お布施」と言っています。これも布施であることに間違いありません。広い意味でいえば、お寺に寄付することも、被災地の人びとに義援金を送るのも、労力をもってボランティア活動をするのも布施に相当するわけです。

 しかし、それがどのような気持ちで行われているかということです。清浄な気持ちで行われているか、不浄な気持ちで行われでいるかということを、仏教では問題にするのです。

 身近なことで申しますと、お葬式やお年忌(ねんき)のときにお布施を出します。そのときにどのような気持ちで私たちは行っているでしょうか。金額については相談される方がよくあります。気持ちはよくわかります。少ないと恥をかくし多すぎると損をしたような気になる。したがって無難な金額でという思いが動くのでしょう。私たちの気持ちの中には、世間体も大切にしたいし、お金に執着(しゅうじゃく)する思いも捨てられません。さらにお布施をしたことによって何かご利益をいただこうという気持ちも動きます。

 このような不浄な思いがおこるのも致し方ないことでしょうが、お布施には喜捨(きしゃ)ということが教えられています。お金や世間体に執着する自分を恥じて、仏前に静かに手を合わせたいものです。

(本多惠/教化センター通信 No151)

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Last modified : 2014/12/09 6:16 by 第12組・澤田見(ホームページ部)