問い

今年八四歳で義母が亡くなりました。この機会に墓の改修を考えています。真宗門徒の墓碑には「倶会一処(くえいっしょ)」と刻むと聞きましたが、どういう意味ですか。

(55歳・女性)

答え

 数年前でしたが、貴女くらいの女性にたずねられたことが思い出されます。その方は妻と死別された男性のもとへ嫁がれた、いわゆる後妻として入られた方で、その再婚された夫が亡くなり、納骨が終わったときのことでした。
 「今度は私が死ぬわけですが、私が死んだとき、このお墓に納骨してもらってもよいものでしょうか」と言われるのです。「それはどういうことですか」と申しますと、「先妻のお骨が納まっているお墓に、今回その夫であった方が納骨され、二人仲よくしておられる中に私が入りこんだら、どういうことになるだろうと思うと心配です」とおっしゃるのです。冗談でもなさそうで、おそらく素直な気持を言われたのでしょう。
 そのときに申しあげたのが「倶会一処(くえいっしょ)」という『阿弥陀経』の中のお言葉でした。今日の言い方で言えば「倶(とも)に一つ同じ所で出遇(であ)う」ということです。同じ所というのは極楽浄土です。『阿弥陀経』の中でお釈迦さまは、極楽浄土のスバラシサを説かれ、その極楽浄土はこの世の利害損得の煩悩(ぼんのう)や好嫌愛憎(こうけんあいぞう)の感情からもすべて解放された涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)の世界であり、もろもろの善人と倶(とも)に会(かい)する世界であるから、お念仏してそのスバラシイ世界に、往生しましょうと呼びかけておられるのです。さらに四方八方におられる無数の諸仏方(しょぶつがた)も浄土往生をすすめておられるということが説かれております。
 真宗門徒の墓碑には、確かに「倶会一処」と刻まれたものが多いようです。また「南無阿弥陀仏」と刻まれたものもよく見かけます。一般には「○○家之墓」とか「先祖代々之墓」というのもありますが、どんなものでしょうか。
 やはり墓前ではおのずと亡き人が偲(しの)べ、すでに浄土へ往生された諸仏方(しょぶつがた)の声なき便りが響いてくるような墓碑銘が望ましいかと思われます。

(本多惠/教化センター通信 No161)

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Last modified : 2014/12/09 6:16 by 第12組・澤田見(ホームページ部)