問い

真宗の教えでは、良時吉日を選ばないと聞いてきましたが、世間一般の人たちとの間で摩擦が起こりそうで、なかなか徹底できませんが……。

(70歳・男性)

答え

 確かに真宗の教えでは、良時吉日を選ぶことは教えていません。むしろ否定しています。真宗の教えでなくても仏教、そして真実なる教えであれば、良時吉日を選ぶということはないはずです。有名な文学者である武者小路実篤氏も、「日々是好日」という言葉を愛しておられました。だいたいが日時に良し悪しを云々するのは、人間が勝手に言いだしたものであって、本来、日時に良し悪しがあろうはずがありません。

 しかしながら世の人びとは、日時の良し悪しをまことしやかに言って、そのことに生活を左右していることは事実です。そこで私たちは戸惑うわけです。まず考えなくてはならないことは、自分自身がどこに立っているかということではないでしょうか。

 自分自身は第三者の立場に立っていて、真宗の教えと、一般に言われている日を選ぶということを並べて考えているのではないかということです。つまり自分自身が真宗に立ち、真宗の教えを拠りどころとして生きているかということです。

 蓮如上人は、内心に深く仏法をたくわえて自身の生き方を明確にし、あとは世間の義に準じて生きなさいとおっしゃっています。極端にいえば、周りの人びとが良時吉日を選んで決めたら、それに従ったらよいのです。しかし周りの人びとが真実に疎いと軽視してはならないと思います。

 一般の人びとが、それほどにしてまで幸せを願い、周りの人びとのことをおもんばかっているかと、形はいかようともあれ、その心根を思う気持ちがたいせつなのではないでしょうか。さらに自分自身に良時吉日にこだわる気持ちは無いと言い切れるであろうか。

 願わくは、そのようなことを縁として、真実なる教えとは何かということを共に考えるきっかけとしたいものです。親鸞聖人の教えは、必ずやその方向を指し示してくださるに違いありません。

(本多惠/教化センター通信 No167)

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Last modified : 2015/03/02 18:28 by 第0組・澤田見(ホームページ部)