問い

真宗では、お内仏(ないぶつ)の中に位牌(いはい)を置かないと聞きましたが、どうしてですか。

(40歳・女性)

答え

 真宗に限らず、仏教本来からして位牌というのは無いはずです。お釈迦さま以降の長い歴史の中で出てきたものと思われます。

 文字から見ましても、位牌とは「位(くらい)の札(ふだ)」ということです。位とは人間の定めたもので、人間の世界を出離(しゅつり)た死者に位などあろうはずはありません。すべて阿弥陀仏の世界、すなわち極楽浄土に還られた諸仏(しょぶつ)なのです。従って真宗では位牌を用いませんし、戒名(かいみょう)とも言いません。仏法に帰依(きえ)した者ということで、法名(ほうみょう)と言います。

 そして法名は法名軸という掛軸にして、お仏壇の側板にかける約束になっています。亡くなられた人は、先に申しましたように、諸仏として、遺された私たちを見守り、念仏する身になってくれと願い続けていてくださるのです。そういう意味では、私たちに先だっていかれた方は、お仏壇の中心に安置してある阿弥陀仏に帰依し、ついに阿弥陀仏の世界、極楽浄土に往生された方がたなのです。

 お内仏は方便化身(ほうべんけしん)の浄土で、その全体が浄土を仮(かり)に表現されたものだと、親鸞聖人は教えられます。その浄土の主である阿弥陀仏を、亡くなられた先祖も拝まれ、さらに私たちに阿弥陀仏を拝む身になってくれと呼びかけていてくださるわけです。

 だからして、一般には位牌とか戒名とかいわれる、亡き人のそれを拝むということはないわけです。先祖があって私があり、先祖が阿弥陀仏に帰依されたからこそ、私が阿弥陀仏のお意(こころ)に触(ふ)れることができた。そういう感謝の気持のあらわれとして先祖、亡くなった人の法名に手を合わせることは大切ですが、あくまで中心は阿弥陀仏です。

 その阿弥陀仏を親鸞聖人も蓮如上人も先祖も拝んでおられるのです。その前にひざまずいて、私たちも阿弥陀仏に手を合わせ、阿弥陀仏の御名(みな)「南無阿弥陀仏」を称(とな)えるわけです。ですから親鸞聖人、蓮如上人の御絵像(ごえぞう)も内側を向いておられるでしょう。

(本多惠/教化センター通信 No170)

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Last modified : 2014/12/09 6:16 by 第12組・澤田見(ホームページ部)