問い

深刻な問題が次々と起こる現代、真宗の教えによって救われるとは、どういうことなのでしょうか。

(30歳・男性)

答え

 真宗の教えの救いとは、現代社会を変革するとか、自分自身を改革するというようなことではなく、ごく身近な、しかも大切なことを教えています。真宗とはいうまでもなく仏教です。善導大師をはじめ、多くの念仏行者といわれる仏教徒の教えを仰がれた親鸞聖人が信解(しんげ)された教えです。

 したがって、まず自覚(目覚め)です。釈尊が「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」とおっしゃったように、生命の尊厳に目覚める教えです。「唯我独尊」とは「唯我独りにして尊し」ということであって、地位、肩書き、財産等の有無に関係なく、生命そのものの尊厳に目覚めることです。無条件に生命あることの尊さに気付かしめられることです。これは自分自身の生命の尊厳に気付くにとどまることなく、生きとし生けるものすべての生命の尊厳に目覚めるということです。そこには当然、すべてのものの生命をいとおしむ気持ちがともないます。

 尊厳なる生命に目覚めると、解脱(げだつ=解放)されるのです。執着、つまり欲望から解放されるわけです。欲望が無くなるのではなく、邪魔にならなくなるのです。「いのちがいちばん大切だと思っていたころ、生きるのが苦しかった。いのちより大切なものがあると知った日、生きているのがうれしかった」と、星野富弘さんが言っています。自分の生命に執着していた、その思いから解放された心境がうかがわれます。

 仏教の究極は成仏です。親鸞聖人も往生成仏を教えられます。目的が定まり、生きる方向がはっきりすることです。人生に方向が定まらないと不安です。自分の人生の方向を自分で決めても不安は消えません。真実なる教えによって、おのずと定まった方向こそ、安心して歩むことのできる道でしょう。それを親鸞聖人は往生道と教えられます。

 真宗の教えによって救われるということは、平易な言葉で言えば、今、私が、現代を生きとし生けるものと共に生きているということはスバラシイことだと気付かしめられることです。

(本多惠/教化センター通信 No184)

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Last modified : 2015/02/11 23:11 by 第0組・澤田見(ホームページ部)