~ 鬼はおらん 鬼をつくる心が こっちにある ─仲野良俊─ ~

 豆をまいて「鬼は外、福は内」。そんな風景は節分の風物詩である。幸多きことを願うのは人の素朴な感情ではある。しかし、よくよく考えてみると、「鬼」とは一体、何であろうか。どうも、自分自身にとって「不都合な」「意に添わない」出来事や存在を「鬼」と名付ける心があるようである。
 その心はいつしか、風船の如く、大きく大きく膨らみ、仲間にとって、地域にとって、社会にとって、民族や国家にとって、不都合なものを作り出し、ついには排除する論理を正当化させ、操縦不能の鬼神を作り出す。そして気がつけば、そんな鬼神に怯え、仕えてしまうことにもなる。幸福を願う素朴な心が作り出した「鬼」が、自分を悩ませ、苦しませ、他を不幸にしていることを忘れてはならない。

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Last modified : 2014/12/13 0:05 by 第12組・澤田見(ホームページ部)