りんどう
精一杯生きていく

 月参りの時、「ええ時候になって来ましたな」「えらいほめきでんな」「暑いことですな」「うっとうしいですな」「降り出したらよう降りまんな」「ぼちぼち寒うなって来ましたな」と言ったあいさつをかわさない日はないくらい私たちの毎日の生活に、天候は大きな影響をもたらしていると言えます。

 ところで、お勤めのすんだあと、お茶を一杯いただいたり、煙草に火をつけたりしてお内仏のお給仕のことや家の中のこと、世間話やいろいろなお話を聞かせてもらうことがあります。

 ご自身の健康のことが一番話題になるのですが、米づくりや野菜づくり、商売や仕事の話、楽しみにしておられることなどいろいろです。

 注文の絶え間がなく、和服の仕立をしておられる人、締切りを迫られて、時には応援を求めて手仕事にがんばっておられる人、えらいなあと思います。

 また、勤めのある傍(かたわ)ら、家事の傍ら趣味と特技を生かして人生をエンジョイされている人たちなど、多士済々です。

 Aさんは民謡の名取り、毎年定期的に施設を訪問、そして年一回民謡の大会を開催。Bさんは三、四年前から民謡を習い、稗搗節(ひえつきぶし)で優勝、部屋には額が何枚かかかっています。Cさんは詩吟の先生、Dさんも詩吟、奥様は謡(うたい)、Eさんは詩吟と書道と(六十の手習いとか)、Fさんはエンジンつきの模型飛行機の制作、また奥様と郷土史の研究、Gさんは俳句をつくり、俳句雑誌へも毎月投句。Hさんは肩の手術をされたが社交ダンスの先生。Iさんはボケないようにと夜遅くまではめ込みのパズルに熱中。Jさんは大の朝日劇場ファン、一週間に一、二度は芝居見物に。Kさんは、一首一首辞世の歌のつもりと和歌に専念。Lさん、時々カラオケの他流試合に。Mさん、カラオケの機材の整備、曲目の整理、写真のアルバムの整理など抜群。

 ゲートボール、早朝の散歩、ゴルフ、菊づくり、アスパラの栽培、盆栽や植木の世話、カラオケ、民謡、魚釣り、パチンコ、骨董品収集、読書などそれぞれ生き甲斐のある人生をとがんばっておられる方が多いのに驚かされます。

 盆踊りのいたって好きなNさん、今年の8月、盆踊りの夜に、音頭を聞きながら84歳で亡くなりました。

 高齢化社会の現在、年をとっても何か自分でできる軽い仕事や楽しみ(趣味)、情熱を傾けられるものをもつことが、自分自身をみつめ、生かすことにも、また社会との交流をはかり、仲間づくりにもなり、自分の人生を精一杯生きていくことにもなっていくのではないかとつくづく感じられたことでした。

(平成元・11・20)

〔追記〕

 Mさん、奥様が亡くなり落ち込んでいましたが、平成7年6月、友だちに誘われて金剛登山(標高1125m)を始めました。最初は、なんでこんなことをと、辛い日もありましたが、だんだんその魅力に取り付かれ、その後、季節を問わず週に何回か金剛山へ登り続け、1回1回力ードに目付と印を押してもらい、100回、200回と積み上げ、平成14年2月1日に、約7年かけて1000回登山を達成されました。自分の努力もありましたが、それだけやありません……。あとは、週に2回程度、マイペースで楽しみたいと言っておられました。

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Last modified : 2014/12/10 3:21 by 第12組・澤田見(ホームページ部)