私は5年前に再婚しました。今の夫の先妻は、病気で亡くなり、お仏壇が二階の部屋に北向きに安置してあります。私は最近、肝炎、心筋障害などで通院中ですが、先日実母に、お仏壇は北と西向きに置くものではないと言われ、それが私の病気に関係しているのではないかと不安です。一日も早く向きを変えてほしいのですが。
(55歳・女性)
ご自分の身体の不調と仏壇の向きと関係があるのではないかと不安を感じておられるとのことですが、それはまったく関係はありません。
お仏壇は「お内仏(ないぶつ)」と言って、私自身のそして一家の中心であるご本尊阿弥陀如来を安置するところであって、先祖の霊を祀る場所ではありません。真宗のお内仏は、方便化身(ほうべんけしん)の浄土と教えられ、阿弥陀如来とその浄土を借りに表したものです。できれば西方(さいほう)を向いて礼拝できる東向きが理想でしょうが、要は家の皆がお参りしやすい、家の中心、上座に当たるところに安置すれば、向きはどちらを向いていても差しつかえはありません。
問題はお仏壇がどちらを向いているかではなく、自分自身がどこを向いて生きているかでありましょう。人生が自分の思いどおりに順調に運んでいるときはともかく、何か思うように行かなくなると「何かの祟りではないか」と思い、他人の言うことに戸惑って右往左往する。その不安の原因は外にあるのではなく、自分自身の内なる迷執にあるのです。そのような迷いを迷いと気づかしめ、どのような困った状況がこようとも、それを確かに受け止め、大切なご縁といただいてゆけということが、「お内仏」を通して呼びかけられている本願念仏の教えであります。
あなたが病気に悩んでおられる事実を大切に受け取り、単に仏壇の向きを変えて気安めの安心をして済ますのではなく、確かな人生の方向を見定めてゆくことこそが促されていることでありましょう。
病気によって「お前はどこに向かって歩いているのか。それでよいのか」と、仏さまに呼び止められ、その戸惑いや悩みをごまかしたり、逃げたりせず、それを大切にして真実なる教えに耳を傾けてゆくバネにしてゆけということではないでしょうか。仏壇の方向が悪いのではなく、何が起こってもすぐフラフラする不安な私自身のあり方、すなわち南無阿弥陀仏ということがはっきりしないことこそが、いちばんの悪いことではないでしょうか。
(本多惠/教化センター通信 No.137)
Last modified : 2014/12/09 6:16 by 第12組・澤田見(ホームページ部)