経教は
これを喩うるに
鏡の如し

きょうぎょうは これをたとうるに かがみのごとし

 「鏡よ鏡、鏡さん、世界中で一番美しいのは?」とは、グリム童話の白雪姫に登場する魔女のセリフだ。鏡は魔女を恐れて、「それは貴女です」と嘘で答える。そもそも人間は、どこかでそんな鏡を求めているのかもしれない。しかし、鏡は向かった人の姿を正直に写し出す。鏡の中の自分を見て、「これは私じゃない」と言うのか、それとも「なるほど、これが今の私か」と頷くか、頷く私と、頷かせる鏡。頷きの世界は明るく、広いものである。
 経典もまた鏡に譬えられる。何を写し出すのか。それは仏の眼に写った人間の偽らざる、ありのままの姿である。経典は真実を説きながら、そこに人間を写し出す。どんな鏡と、どんな私に出遇うかが、今、求められているようだ。

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Last modified : 2014/12/11 6:52 by 第12組・澤田見(ホームページ部)