折々の華【しゃらりん32号記事】

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正月の立華と竹の水揚げ

仏華は、私たちのお寺の内陣の荘厳の中でも、ひときわ参拝の門徒さんの目にとまりやすいものです。

ですので年がら年中同じお華を立てるのではなく、できるだけ法要の軽重などによって変え、また折々の季節の花を用いて四季の移ろいを表現していきたいものです。

これからの冬から春にかけての時期は、立華をするにはたいへんよい季節です。長く保ちますし、木花の種類も豊富に出回ります。ウメ、ロウバイ、ボケ、ツバキ、モモ、カンザクラ、モクレンなど、さまざまな真で立てることができます。

また正月の華は松竹梅をはじめ、センリョウやナンテン、ハボタン、ヤナギやクマザサなど正月特有の花材を用いて、新年らしく華やかに立てたいものです。

写真の仏華は御代前のもので、竹を真にしています。あまり竹藪などが近くになく、手に入りにくい方も多いと思いますが、入手できればとても立てやすく、そして目立つものです。水さえ揚がれば今の季節なら半月以上は保ちます。

水揚げの方法は上から揚げたい枝があるところまで水が入るように竹の節を金棒などで抜き(すべての節を抜かないでください)、上部から熱湯を入れます。それからすぐにその熱湯を捨て、今度はお水を入れます。あとは水が減ったぶんを上から補水してください。一日置いておけば成功しなかったものは葉が丸まってしまいますので、水揚げは立華する前日にするとよいでしょう。
(詳しい方法は「ちいちの華ウェブサイト―竹の水揚げ編」をご覧ください。

その他、副(ソエ・真の下から向かって左後方に伸びる役枝)には枝垂れ柳を用いています。内陣の床まで届くような長い柳は高価ですが、使うとお正月らしく、そして格好のいい花材です。

みなさまもぜひこのように季節感を大事にして、仏華を楽しんで立ててみてください。

(文・立華 ちいちの華 澤田 見)

【使用花材】
真=竹/役枝=センリョウ(赤)・枝垂れ柳・ヒバ/胴=ヒバ・キク(白・黄)・コギク(白)・ナデシコ・ハボタン

※「ちいちの華」のウェブサイトなどにも立華の手順が解説されています。ぜひこちらもご参照ください。
www.icho.gr.jp/n_dantai/chiichi

→『しゃらりん32号』PDFはこちらからご覧になれます。