折々の華②【しゃらりん33号】

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夏とお盆の立華

梅雨から夏にかけての季節は、花材がすぐに枯れてしまう、仏華にとっては過酷な季節といえます。しかし造花などに頼ることなく、夏らしいお華を立てたいものです。
盂蘭盆会の立華に特に決まりはありませんが、マキの真が使われることが多いようです。その他、蓮の花や葉、蓮台などを用いるとお盆らしくなりますが、蓮は水揚げが難しく、ほぼ数日で萎れてしまいますので、扱いの難しい花材です。その他、この季節によく見られるのは、ホオヅキやパンパス(西洋ススキ)などで、やはり季節感を大切に立てていただければいいかと思います。

よくどうすればお花の保ちをよくできるのかという質問をいただきます。ちいちの華でもいろいろ試しました。花の延命剤、錆びたクギ、十円玉、洗剤を一滴垂らす……などなど。
結論から言うと、夏の盛りではほとんど効果がありません。わずかに長持ちするだけでした。
結局、必要なのは花瓶の水を腐らせないことです。毎日、中の水を全部入れ替える(たいへんですが)のが、もっともいい方法ではないかと、経験上思っています。
その他、なるべくよく保つ花材を使うことが大切です。緑のものならハランやソテツ、ドラセナ、アレカヤシ、アセビ、ツツジなどが暑さに強いし、色花ならベニバナやルリタマアザミ、スターチス、ピンクッション、クルクマなどが比較的長持ちするようです。

写真は「ハラン一式」で立てたものです。色花を用いていませんので本来の仏華とは言えないかもしれませんが、夏場でもかなり長持ちしますし、見た目も涼しげでよいものです。この形を作って、あいだに色花を挿し、それだけを入れ替えていくということもできます。
3種のハランをあわせて50枚ほど用いています。また見えないところにたくさんのコップ(受け筒)が隠されています。これがないとこのように高くできません。格好よくきれいな形に立てるためには、経験とセンスの必要な難しい仏華です。

ちいちの華 立華 松井 聰/文章 澤田 見

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