折々の華③【しゃらりん34号】

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折々の華「本山の仏華、一般寺院の仏華」

  

御本山の仏華と、ちいちの華のものとでは、ずいぶん違いますねと言われることがよくあります。

そもそも大谷派の仏華は池坊の立華(りっか)が基本になっています。上の左図はその中の松の除真(のきしん)の立調図です。ここにあるように九つの道具(役枝)、すなわち真(しん)・副(そえ)・請(うけ)・正真(しょうしん)・見越(みこし)・流枝(ながし)・前置(まえおき)・控枝(ひかえ)・胴(どう)で構成されています。またその他、場合によっては内副(うちそえ)や副下(そえした)、請下(うけした)、木留(きどめ)、草留(くさどめ)など十数種類あるあしらいの小道具を用いることになっています。

ただしこれはあくまで床の間に飾るためのお華であって、本堂の御内陣という特殊な空間にそのまま置いても、どうしても見えにくく、映えないということになります。

とくに御本山の両堂という広大な空間では、仏華も巨大なものにならざるを得ませんでした。「花小商店」という本山立華の専門業者がおそらく試行錯誤しながら特殊に進化させていったのが、現在の東本願寺の仏華だと言っていいでしょう。実際にご覧になったらおわかりになるように、遠い距離からでも目立つように役枝等を太く派手に強調しています。また菊などの色花も単独では見えないため、何本も重ねたり束ねたりしてひとつの花材として扱っています。その結果、あれだけの距離を隔てても、圧倒的な存在感を持った仏華が生まれました。

いっぽうで一般寺院の御内陣にはそこまでの空間はありません。もちろんお寺にもよりますが、単独でお花を使ってもしっかりと視認できる広さです。ちいちの華はそんな私たちの御堂に適した仏華を立てるべきだと考え、研鑽してきました。お流儀のものと比べると誇張したり省略したりしていますが、それでも木々の枝の姿勢、色花の一輪こそを生かして、池坊立華本来の様式、役枝が形作る空間、季節の草花による色彩を大切にしながら立調しています。

また一般寺院では御本山のように業者を常に雇うわけにはいきません。そんな中、できるだけ楽しく簡単に、またなるべくコストも抑えられるようにと工夫をしています。

どちらが正式とか、正解ということではありません。それぞれの事情にあわせた美しい仏華を立てさせていただくことが、いちばん大切なのではないかと思っています。

立華・文 ちいちの華 澤田 見