価値観では済ませられない根深い差別心が「今」の問題として提起されている ~ 第73回 全国人権・同和教育研究大会奈良 大会が開催

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奈良公園も竜田川も見事な紅葉で奈良は絶好の観光シーズンを迎えています。そんな行楽にうってつけの土日にも関わらず11月26日、27日と奈良県内外から六千名の方々が「第73回 全国人権・同和教育研究大会 奈良大会」に参加してくださいました。

今年は水平社宣言100周年。そんな記念すべき年に奈良の地で本大会を迎えることができました。大会テーマは「差別の現実から深く学び、生活を高め、未来を保障する教育を確立しよう ―― 部落問題を解決し、人権文化の創造をはかるために、同和教育の充実と発展を通して人権教育・人権啓発を構築していこう ――」。主催は「公益社団法人 全国人権教育研究協議会」と開催県現地実行委員会です。

大和ブロック(24組、25組、26組、27組)の真宗大谷派寺院は奈宗連(差別をなくす奈良県宗教者連帯会議)という奈良県下の26の各宗教、宗派と「共に人権問題に取り組んでまいりましょう」という団体に所属しています。その奈宗連は奈人推協(奈良県人権教育推進協議会)の加盟団体でもありますから、今回の大会に全面的に協力してまいりました。

本大会は、先月に難波別院で行われた「大阪教区 宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃法要 お待ち受け大会」と同様に、新型コロナウィルス感染拡大対策として、なら100年会館をメイン会場とし、分散会場の生駒市たけまるホール、やまと郡山城ホール他へ全体会と特別分科会のインターネット配信を行いました。また参加券に記載の情報で個人視聴もできるようにしました。

全人教育大会配信画面

全体会と特別分科会以外の分科会は、14分科会21分散会場で行われ、「人権確立をめざす教育の創造」「人権確立をめざすまちづくり」等、現場からの様々な報告がなされ、意見交換の場が持たれました。教育関係者のみなさんの子どもたちへの篤い思いや人権問題に対する真摯な取り組みを聞かせていただくに、これほどまでに私たち宗教者は檀家さん・信者さんのみならず同じ時代、社会を生きる人たちに理念だけでなく具体的に向き合っているのだろうか…ということを考えさせられたことです。

法務が忙しい土日にも関わらず大和ブロックの各組から参加してくださったみなさま、ありがとうございました。本大会がみなさまの学びの一助となりましたら幸いです。

全人教育大会分科会の様子

- - - 参加者の声(第27組 浄宗寺 畠中光炎)- - - - - -

組内で「誰か参加してよ」とチケットを渡され、何の気なしに参加させていただきましたが、いざ行ってみると全国からおよそ6000人が参加するとても大規模な大会であることに驚きました。

今年5月に亡くなった自坊の前坊守である私の祖母は満100歳でした。祖母が生まれたのが大正11年2月28日でしたので、祖母が生まれた3日後に岡崎で水平社宣言がされたことになります。

教育者として中学校の教壇にも立っていた祖母はとても芯の強い人で、最後まで人の手を患わすこともなかったほどです。

一方、言論においてはとても差別的な発言をする人でもありました。「あっちの人」「こっちの人」など人を区別するのは当たり前で、それまで被差別部落の問題を目の当たりにする機会のなかった私には、当初、何のことかわからなかったものです。テレビに映る肌が褐色の外国人を指して「クロンボ」と言い捨て、直接関わったことのない人でも容姿や家柄で「いい人」「悪い人」と判断するような人でした。

直接本人に向かって言っている訳ではないし、これはこの世代の人の価値観なのだろうと、特に咎めることもせず受け流してきましたが、長年教師をしていた祖母も今回のような大会に幾度か足を運んだことだろうにと思うのですが、そんなこともなかったのでしょうか。

令和4年の現代においても教育の現場で「差別」が問題となり、それに対する取り組みや指導について苦悩する教育者の方々がおられ、価値観では済ませられない根深い差別心が「今」の問題として、こんなに大規模な全国大会で提起されていることが、今回参加させていただいた中で一番の衝撃でした。

狭い檻で飼うことで、猿や鳥や魚でも「いじめ」が発生するように、他と比べて優位に立ちたいという気持ちが起こるのは生き物の本能なのかも知れません。どうやったら差別がなくなるのかという問いに答えることはできませんが、「そういう見方はおかしいよ」と、「間違ってるよ」と確認し続けていくことが大切な行動なのだと、今大会に参加させていただいた中であらためて感じたことでした。

水平社宣言から100年という節目にあたる年に奈良で全国大会が行われ、たまたまのご縁ではありましたが、参加させていただけてよかったなという思いです。