つながりを生きる 2 /宮城 顗

1 五感喪失

 先ほど、仏教讃歌を聞かせていただきました。指揮の先生が、全身を使い、肺を動かしてという、喉からの声ではなしに、全身から出る声ということを教えてくださっていたのではないかと思いますが、お互いに、共に合唱するということが、私たち人間にもたらします一つの大きな力がございますね。何かそこに心が一つに解け合っていく、まあエコーという言葉もお使いでございました。お互いの声が響き合う。エコーというのはおもしろいですね。みんなが同じ声だったらエコーにはならないのですね。それぞれ異なった声が、しかも一つに響き合う。何かそういうエコーの世界ということもおっしゃっておられました。

 これは改めて教えられたわけですが、現代におきまして、私ども人間が、人間としての自然なあり方というものをどんどん失っている。いわゆる人間の手による自然破壊ということが、現代の大きな問題となっていますが、その外なる自然を破壊してきた行為というものは、ただそれだけに止まらずに、人間としての自然、人間としての自然な感情。自然な心。そういうものをも共に破壊してきたということがあるわけでございます。

 今日、本当に新聞やテレビを見るのが心重くなるような、そういう事件が次から次へと報道されております。それもただ、凶悪な人間がたまたまいて、凶悪な事件を引き起こしたと、そういうことではなくて、何かある意味で、どう言えばいいのでしょうか、最も現代的な、そういう育ち方をしてきた若者たちが、凶悪と言いますよりも、非人間性といいますか、同じことといえば同じなのですけれども、何か意識して凶悪な手段で人のいのちを奪うというよりは、もう何の抵抗、何の疑問、ためらいもなしに、どうしてそういうことができるのだろうかというような行為を、次から次へと起こしていく。関係のない小さな子どもを引きずりまわして、果てはビルの上から投げ降ろす。ただむしゃくちゃしたからというだけで、何の関係もない学校の子どもたちに刃物をふるう。そこには何か人間として当然あってしかるべき心というものが、もうなくなっていると、そういう思いが強くするわけでございます。

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Last modified : 2014/01/27 23:01 by 第12組・澤田見