「通常の法務ですら難しくなっている中……」遠隔地寺院のサポート事業再開に向けての聞き取り

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第27組(奈良県中南部)の組長さんの呼びかけで、教務所職員さんと共に27組の吉野地区にある浄教寺さんと瀧光寺さんを訪ねました。

どちらのご寺院も以前は大阪教区の教化事業の一つ「巡回講座」をご活用いただいていましたが、コロナ禍の三年間は開催を見合わせておられました。そこで、今後の再開の見通しと、限界集落にある寺院の現状を併せてお聞かせいただくというのが今回の訪問の趣旨です。

吉野郡下市町栃原にある浄教寺さんは、この日の集合場所であり27組内に位置する大和大谷別院から同じ組内にも関わらず車で1時間かかります。吉野の入口に当たる下市町からグングンと登っていったところに栃原の集落はあり、急峻な斜面に建つお寺からは麓と山々の絶景を望むことができます。
ご住職からはお寺と地域の現状(人口約80人、門徒戸数7件)についてお話しをお伺いしました。今年中の巡回講座再開はかないませんが、来年の4月に開催させていただくことになりました。

続いて吉野郡黒滝村槙尾にある瀧光寺さんに向かいましたが、槙尾は吉野の山々に囲まれた谷川に沿う本当に小さな集落で、栃原から更に車で30分ほどかかります。
こちらでもご住職からお寺と地域の現状(人口約20人、門徒戸数5件)についてお話しをお伺いしました。黒滝村には浄土真宗のお寺が14ヵ寺(瀧光寺以外は本願寺派)ありますが、住職が在住しているのは瀧光寺さんともう一カ寺だけだそうです。
ご住職は昨年90歳を超えられ、通常の法務・法要ですら難しくなっておられるとのこと。今後のことをずっと悩まれておられ、巡回講座の再開は厳しいというのが実情です。このような状況を受けて、組としては何かご要望があれば組長さんを通して組内でサポートさせていただくことになりました。

なお、瀧光寺さんのご住職は小学校の教師もされておられたことから、地域社会にも深く関わってこられましたので黒滝村近隣の歴史にも詳しく、お寺と地域社会との深いつながりを語ってくださいました。
お寺と地域社会が共に支え合ってきた“人々の暮らし”の歴史の重みを感じさせていただいたのと同時に、その歴史の幕が閉じつつあることに淋しさを感じずにはいられませんでした。

報告者:組教化推進部 吉内利彦

組長談「過疎化と言われる地方だけでなく地域住民の減少と高齢化や地域社会の担い手不足は、そのまま門徒戸数の減少と住職の高齢化や後継者難に重なり、吉野に限らず多くの地域で起こっている問題であります。特に奈良県の山間部のように地域社会自体の存続が危ぶまれるところでは、住職一人の努力では立ち行かなくなってきています。組としても何かお手伝い出来ることはないか、組会や教化委員会等の場で検討していかなければなりません。」(法善寺 松林宏明)