3 全身性を取り戻す

 何かそういうことが、今日ございます。そういう五感を喪失して、身体のごく一部だけで生きている。朝から晩までインターネットの画面、あるいはゲームの画面、そればかりを前にしている。何かそういう自分だけの、しかも、目だけの、耳だけの、そういう生き方でございますね。そういう中で何かこういう先ほどのような合唱、その合唱はやはり全身性を取り返す。全身性を取り戻す人間の大きな分野だと思うのですね。何か歌う。合唱される時には、全身で周りの声を聞いているということがございますね。そしてその中で自分も声を出していく。だからハーモニーが生まれるのでしょう。周りの声を全身で感ずるということがなかったら、ただ自分一人酔ってですね、自分の美しい声にうっとりしている。それだけのことになりますと、これはぶち壊しでございます。それで合唱というものが何か人としての全体性を回復する。そして全身的なつながりというものをそこで感じながら生きていく。行為する。何かそういうものを感じるわけです。

 歌が下手で合唱などとんでもない私が、こういうことを言っても説得力がないかもしれませんが、しかし、下手なりに合唱というものを聞きます時に感ずる一つの感動というのは、決して身体の一部分での感動ではないということを改めて思います。そういう全身性を回復しなければ、私どものつながりというものは、やはり偏ったつながりでしかなくなるのだろうと思います。

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Last modified : 2014/01/27 23:01 by 第12組・澤田見