教化委員会三年間を振り返って【しゃらりん36号】

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新教化体制が発足して今年度末で早くも3年。刷新された教化委員会で1期目を終えられた総合調整局長、ならびに各専門部の幹事のみなさんに、総括を寄稿していただきました。

 

総合調整局

宮部 渡( 第15組西稱寺)

旧体制の「企画部」から現体制の「総合調整局」への組織変更にはいくつかのポイントがありましたが、一番の変更点は、あて職中心の人員構成から各専門部幹事を中心に構成された、いわば現場を担う方々の組織へと変わった点です。

これにより、今まで自分の関わる部会中心の報告会であった幹事会を、教区教化をお互いに俯瞰しあいながら、「現場が主役 つながる教区教化」の掛け声のもと、互いを見つめなおし、教区教化全体の問題として、文字どおり調整をはかっていく場となり得たことです。

策定委員会からの狙いであった、コーディネート部門を中心に、いわゆる内向きの学習を脱皮し、現場に出向く教化を念頭に企画が組まれていきました。そしてそこには必然と専門部間の枠を超えた動きも徐々に見られるようになってきました。

まだまだ試行錯誤で十分な成果とはいきませんが、各専門部会からの報告のとおりその第一歩を踏み出したことは間違いありません。

この歩みを次期を担ってくださる方々に十分ご理解いただき、さらに推し進めていただきたく思います。コロナ禍により、引継ぎの簡略化を余儀なくされました。次期教化委員会の方々には我々に遠慮なくおたずねくださり、また、我々も協力を惜しまない覚悟でおります。どうぞよろしくお願いいたします。

 

儀式・法要部

新川隆教(第21組西向寺)

この3年間の事業を通して「出向く」と「コーディネート」ということが言われてきました。儀式・法要部では各組や寺院より依頼を受けて開催する事業が多いのですが、その案内を同じ教化委員会各部門より協力して発信していただけたというのがもっともよかったことです。その結果、「寺院儀式相談室」では仏花、落慶法要、念珠製作等、依頼の項目や回数が増えました。

また、本山・別院や教区内諸団体と共催する事業も多く、「登高座作法講習会」では本山より伝授師、教授師を迎えて天満別院にて開催し、その地域の方に特にご参加をいただきました。この後も5年間隔で難波別院を主にしながらも各別院で開催していくことを願っています。「子どもの集い(大)」や「子ども報恩講」では難波別院、「得度受式後講習会」では八尾別院、また各種講習会では青少幼年部や准堂衆会、温雅会、児童連盟とたくさんの協力体制ができました。

しかし、儀式法要部として実質的に目標にしてきた各寺院での御遠忌法要の厳修の増加、「子ども同朋唱和講習会」の開催における寺院子ども会の発足の願いは、まだまだ達成には程遠いことです。幹事として参加した総合調整局でも、教区全体の事業を中長期的に見据えてどこに重点をおいて課題とするのか、という視点で削減と新規事業の立ち上げ(スクラップ&ビルド)をすることが必要であると感じます。私の反省も含めて、次期教化委員会委員の方々にも引き続き討議していただきたいと思います。

 

研修・講座部

建部智宏( 第7組敎應寺)

「聖典講座 仏教学」は、従来は難波別院のみで行われておりましたが、2018年度より、天満別院へ出向き、開催させていただきました。それにより、今までの参加者に加え、天満別院のご門徒や近隣の方々、崇敬寺院のご門徒に参加していただけたことは「出向く教化」の成果であると考えます。

「同朋の会推進実行委員会」は、委員を対象とした専門講座を開催し、座談会の方法の模索や、教区内外の様々な現場の声に学ぶ活動を続けてきました。そのうえで、委員が「聖典講座 真宗学」の座談会の司会や、「同朋の会推進講座(推進員養成講座)」にスタッフとして出向くこと、また「同朋の会サポート事業」では、実際に寺院に出向き同朋の会のお手伝いをする活動につながってきております。また、2018年度から2年にわたり「大阪教区同朋の会推進員連絡協議会(大推協)」との懇談会を開くことができたことは、僧侶と門徒の垣根を越えて共に「同朋」ということを確かめる大切な場をいただけたと感じております。

旧行事部の事業であった「同朋大会」「全推進員の集い」なども、各実行委員会の任期が3年になったことにより、委員同士のつながりが深まり、1年ごとの引継ぎも必要なくなり、会議の進行もスムーズになりました。ある委員からは「3年という任期を生かし、それぞれ前年の活動内容を積み重ね、最後の年で完結するような展開があってもいいのではないか」という意見も聞かれ、今後、単年度ではできない事業の深まりが期待できると感じました。

 

青少幼年部

松井 敦( 第21組圓德寺)

大阪教区教化委員会の中で新設の青少幼年部では、「難波別院報恩講子ども出仕」のお手伝いと、「初参式」を立ち上げました。出向く教化としましては、子ども会や青年会への巡回をさせていただきました。儀式法要部との共催では「子ども同朋唱和講習会」や「得度準備講習会」などをさせていただきました。難波別院主催の「花まつり子ども大会」や「子ども報恩講」のお手伝いをさせていただきました。いずれもたくさんの子どもたちと出逢うことができました。

それ以上に大事にしたことは、子どもたちに誕生日カードを発送し、そのぬり絵を送り返していただくことを続けたことです。私の子ども時代には、教区から子ども宛に手紙が届くことなどなかったですが、今の子どもはしあわせだと思います。

2019年度後半には新型コロナウイルスが蔓延して教区のほとんどの行事が中止や延期に追い込まれました。その中でも、緊急事態宣言で外に出て遊べない子どもたちに、クイズやぬり絵、トリックアートなどで楽しんでいただくために、誕生日カードの発送を続けています。こんな時こそ何ができるか考える時だと思います。

次期教化委員の方は、少しでも多くの方に青少幼年活動へのご協力をいただき、これからの教区を背負って立つ子どもたちを成長させてあげるようにご尽力ください。

 

組教化推進部

山口知丈( 第 9組昭德寺)

「つながる教化」で「ひろがる教化」各組独自の教化の取り組みを通して

今の大阪教区の教化体制の「現場が主役 つながる教区教化」というあり方が、何を生み出していくのかを、探ってみたいと思います。まずは、「人権学習」です。ひとつは、昨年6月21日に開催された第9組人権学習会「発達障がいについて学ぶ」です。組の人権推進要員自身が抱える課題を、組全体で共有しようとするもので、講師の松井聡氏(第21組浄得寺住職)による体験を踏まえたお話がなされ、その後、NHKが放映した「君が僕の息子について教えてくれたこと」のDVDを鑑賞。ふたつの貴重な事例から、自閉症の家族を持つことの重さとともに、自閉症の「心の声」に触れる学びの場でした。もうひとつは、今年2月12日に開催された第11組人権学習会「児童養護施設レバノンホームについて」です。会では、施設長の栗本一美氏より、ホームの成り立ちや、そこで暮らす子どもたちの生活の様子をお話していただき、組門徒会の方々を含めた約40名が熱心に耳を傾けておられました。この学習会は、組長の玉井久之氏が長年温めてこられた課題で、組はもとより北摂ブロックへの参加の声かけがなされました。

次に、「教学・教化」についての組における取り組みです。第21組では、「法話を考える会」として2017年から全9回の学習会を実施されています。昨年12月18日にその最終回を迎え、村上宗博氏(京都教区山城第1組願教寺)を講師に「親鸞聖人最後の手紙 『親鸞聖人御消息集』を紐解く」のテーマでお話をいただきました。宗祖晩年の心情をうかがい知ることのできる機会となりました。

これらの組独自の取り組みが、組教化推進部を通し「組教化委員長・同朋の会教導懇談会」等で紹介されるならば、教区全体で「課題の共有」が生まれることになります。つながりが生む、教区全体への「ひろがる教化」。これが、今の体制のよさではないでしょうか。

広報・出版部

澤田 見(第12組清澤寺)

広報・出版部は以前の出版会議、ホームページ部、視聴覚伝道部、しゃらりん編集部から成る専門部会です。覚悟はある程度していましたが、その内容は多岐にわたり、なおかつ膨大でした。幹事としてなかなかすべての事業に目を配れなかったと反省しています。

出版会議はいままで独立した組織であったのを、教化委員会との連携を密にしていくということで組みこまれました。出版物ごとにプロジェクトチーム的な実行委員会を作り、編集を行っていくという方針を立て作業してきました。しかし1冊の本を制作するには時間がかかり、3年目の今年にしてようやく形になってきました。『真宗門徒のお葬式』ブックレット版をこのたびの全寺院発送でお届けしています。また近々、平野修先生の『化身土巻講義』、『表白(敬白)例文集』などを発刊できるかと思います。

ホームページ実行委員会では従来の『銀杏通信』の継続的な管理・運営と、月2回の「パソコン相談室」を行ってきました。コロナでの外出自粛もあり、ウェブ会議やリモートワークなど、ITを活用した組・寺院の活動への支援も積極的に行っていきたいと考えています。(本誌9ページもご覧ください)

視聴覚伝道実行委員会は教化に使えるお金も限られてきているなか、高額な予算を必要とする動画の制作も難しく、どのような活動をしていったらよいのか模索を続けていました。まだ結論は出ていませんが、映像制作以外でなにかできることはないかと考えています。

しゃらりん編集部は「広報コーディネート実行委員会」として教区の広報全般を受け持ちました。具体的には教区テーマ広報のための栞やクリアファイルなどを作っています。そのほか教区を広報する手段はないのか、こちらも模索中です。

ほんとうに活動内容がたくさんある部ですが、教化委員会内の連携という面では、教化体制の見直しの効果も確実に出てきているというのが実感です。

(『しゃらりん』36号・2020/6発行より)