今月のことば/教化センターリーフレット2012/3

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如来 微塵世界に みちみちたまえり

『唯信鈔文意』(聖典554頁)

今月のことば 『唯信鈔文意』では、涅槃を仏性といい、仏性を如来と表されます。また、この時の如来とは、阿弥陀如来のことです。そして、標記の語の後には、「すなわち、一切群生海の心なり」とあります。

 私たちが住んでいるこの地球という星には、たくさんの生き物がおり、その一々は、計算することのできない、たくさんの世界があります。それこそ人間には見えなくても小さな小さな数限りのない、世界があるのです。それを、微塵世界と呼ぶのです。

 しかし、その中で人間は、毎日の生活において何か起これば、一喜一憂する存在ではないでしょうか。身近なことで言えば、他の人の一言によって、心は右往左往します。大きな事でいえば、昨年の3月の大震災やそれに伴う原発事故で、肉親・知人の死を通じ、生きることへの憂いや悩み、想いの届かぬ苦しみを抱えられていることでしょう。

 それは、人生の無常を、不安を、頼りなさを、そして、誰も代わることのできない人生を生きる私の心を見つめさせます。心底、孤立無援を感じさせる時があるのでしょう。

 阿弥陀如来とは、「ひかりかぎりなく、いのちかぎりなしということであり」、そのいのちというのは、「同感するはたらきである」と金子大榮師は表してくださいます。そして、「泣く人に対しては泣く人の心持ちに同感し、悩む人に対しては悩む人に同感する。いかにもそうであると同感してゆくはたらき」と、示してくださいます。

 そして、その如来(はたらき)は、私の気付きに関係なく、誰にでも、何時でも、どんなちいさなところにでも差別なく、生きとし生けるすべてのものの「いのち」となって、満ち満ちているのです。

(所出・教化センターリーフレットNo298 2012/3発行)