人間は受信機

 最初に、人間は受信機だということを申し上げました。よくお浄土からの呼びかけとか、そんなものは聞こえたためしがない。そんなものはどこにあるんだ、と言われますけれども、それは私たちの受信精度が悪いんです。

 先月、こちらの阪神大震災の法要に寄せていただいたんですけれども、ご遺族の方々を前にして思いましたことは、「この方々は大変なご苦労をなさって、辛いことを経験なさって、その受信機ということで言えば、受信精度がものすごく上がっておられる方々やなぁ」って思いました。私たちは嫌なことを引き受け、辛い目に遭い、去年はここまでしかできなかった。そういったことを経験しながら、その私が生かされているということの後ろに、どれだけのことがあるのかということを、気づくことのできる受信機としての精度といいますか、そういったものが上がっていくのではないかと思います。

 チベットのラマ教の言葉では、「弟子の準備ができると師が現れる」と、こう言います。私たちが求める気になったとたんに、自分の周りはすべて先生になる、ということです。吹いてくる風までもが、先生なんです。私たちにあらゆるものが、「私たちの真実の姿に気がつけよ。目覚めてくれよ」っていう呼びかけを続ける。そういう呼びかけをしてくださっているにもかかわらず、私たちは受信機としての性能を磨くよりも、何といいますか、たらふく食べて、寝て。もうしたいことがないんじゃないか、というぐらいになって、鈍くなってしまっています。

 今、何がしたいですかって言われたときに、何が食べたいですかって聞かれたときに、最近、腹の底からおいしいって思ったことがありますかと言われたときにですね、非常に鈍感になっている自分というものがあるんです。かつて何も食べるものがなかったときに、茶碗一杯のご飯がどれだけ光って見えたか。そのことは私は経験したことがございませんけれども、今はどうなっているのかということですね。

 私たちの受信精度は、どんどん鈍くなっているのではないかと思うわけです。徳島県に河野道郎さんっていう、蘭の栽培をしている人がいるんですけれども、世界一の蘭の栽培家です。その方は人間のことをこうおっしゃるんです。「宇宙中には、地球の他にも知的生命体がいっぱいいると思います。その知的生命体がいっぱいいる中で、落第生が地球に送り込まれるんです。地球の外で通用しないものが地球へ送り込まれて、お前は地球で一生涯過ごせと言われる。訓練をしてこいといって、送り込まれてくるのが地球なんです」と。

 どうしてその話になったかといいますとね、なんでクリントン大統領のような偉い人が不倫をするのかという話からなんですが、それに対して、「アメリカの大統領といっても、人間そのものが宇宙全体でいいますと落第生。その中から選ばれたのですから、まあそのぐらいのことはあります」、ということなんです。お念仏の教えというのは、落第生のための教えなんです。私たちは落第生として生まれてきた。落第生として、思うようにならない人生を送っていくために、私たちは生まれるんです。

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Last modified : 2014/12/21 22:48 by 第12組・澤田見(ホームページ部)