私って何だろう

 思春期が訪れますと、みなさんもそうであったと思いますが、どんな子どもも、たいていの場合は自分の中から、わけがわからないままに「私って何だろう」、「人間って何だろうか」と、「人間ってどういうことなんだろうか」と、このような疑問がわき起こってくるんです。その大事なときに、我々大人がたいがいその疑問をねじ曲げて、「そんなことは大学に受かってから考えたらいいんだ」とか、「今はとにかく目の前の勉強をがんばればいいんだ」と言って、ごまかし、ごまかしするんです。しかし、子どもたちの中には必ずそういったことがわき起こってきます。

 心理学の言葉では、このことを「内的自我同一性の危機」といいます。自分の心の中に、疑問を投げかけてくるものがある。しかし、現実の私とは一致しない。そういうところで、子どもは悩むんです。そこで、人間は本来悩むものなのだと、他の人たちも悩んでいるんだ、ということが知らされておりませんと、一種の自家中毒に陥ってしまって、わけがわからなくなってしまうんです。私たち大人から見れば、なぜそんなことをするのかまったく理解できない行動をとるわけです。

 保護観察官の小宮ゆみという方が、先ほど言いました村上龍さんの『教育の崩壊という嘘』という本の中で、「思春期の子どもは、自分の存在が認められていると感じられないと、非行や自殺など、他人の目にはまったく不合理な行動を起こしがちである」。あるいは、「自分の存在に疑問を持つのがごく自然なこと、それを知らない子どもや若者は、人間とは何かという問いに自家中毒を起こし、自分や他人の身体を傷つけてみたり、薬物に逃避したり」という、これはそういうもんなんです。みなさんもどこかで経験があるのではないでしょうか。

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Last modified : 2014/12/21 22:48 by 第12組・澤田見(ホームページ部)